「墓じまいをしようと決めたけれど、何から手をつければいいのか分からない」。そうした声は少なくありません。墓じまいには、親族への相談から始まり、改葬先の決定、行政手続き、墓石の撤去、そして新しい供養先への納骨まで、いくつもの段階があります。全体像が見えないまま進めようとすると、どこかでつまずいてしまうことも珍しくないでしょう。
墓じまいの費用については別記事「墓じまいの費用相場と払えない時の対処法」で詳しく整理していますが、本記事では手順・段取りに焦点をあて、検討を始めてから完了するまでの流れを7つのステップで解説します。これから墓じまいを進める方が、次に何をすべきか迷わないための道しるべとして参考にしてください。
墓じまい完了までにかかる期間の目安
墓じまいは、思い立ってすぐに終わるものではありません。親族との調整、改葬先探し、複数の証明書の取得、行政手続きといった段階を一つずつ踏んでいく必要があるため、検討を始めてから完了まで、数ヶ月程度かかるケースが一般的とされています。
特に時間がかかりやすいのが、親族間の合意形成と、改葬先選びの2つです。急いで結論を出そうとすると、後になって「もっと話し合っておけばよかった」という後悔につながりかねません。逆に言えば、早めに動き出しさえすれば、慌てずに進められる手続きでもあります。以下では、一般的な流れを7つのステップに分けて紹介します。
ステップ1: 親族との合意形成
墓じまいの最初の一歩は、親族への相談です。お墓は祭祀承継者(お墓を継いでいる方)だけのものではなく、親族全体の心情に関わることが多いため、独断で進めてしまうと、後々のトラブルの原因になりやすいとされています。
相談する際は、次の点をあらかじめ整理しておくと話し合いがスムーズです。
- なぜ墓じまいを検討しているのか(管理の負担、遠方で通えないなど)
- 改葬先の候補
- 費用負担をどう分担するか
連絡が取りにくい親族がいる場合も、計画が固まる前に「検討していること」だけでも伝えておくと、後から「知らなかった」という反発を避けやすくなります。費用負担をめぐる争いや、お墓の解体・改葬先への反対は親族間トラブルの主なパターンとされており、早期の合意形成が重要です。
ステップ2: 改葬先の決定
親族の合意が得られたら、次は遺骨の新しい納め先(改葬先)を決めます。改葬先には、一般的な墓所のほか、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨などの選択肢があります。改葬先によって費用や供養の仕組みが大きく異なるため、樹木葬・永代供養を検討している場合は「樹木葬と永代供養の違いをやさしく解説」もあわせてご確認ください。
改葬先を決める際は、次の点を比較検討するとよいでしょう。
- アクセスのしやすさ(お参りに通いやすいか)
- 永代供養の内容(法要の頻度、期間の定めなど)
- 将来的な改葬の可否(合祀型は原則として再改葬できない点に注意)
- 総額の予算感
改葬先が決まっていないと、次のステップで必要な「受入証明書」が発行されず、行政手続きに進めません。この段階を先送りにすると、全体のスケジュールが後ろ倒しになりやすい点は押さえておきたいところです。
ステップ3: 現在のお墓の管理者への相談・埋葬証明書の取得
改葬先の目処が立ったら、現在お墓がある寺院・霊園の管理者に、墓じまいの意向を伝えます。この際に発行してもらうのが「埋葬証明書(埋蔵証明書)」で、今のお墓に誰の遺骨が埋葬されているかを証明する書類です。改葬許可申請の必須書類の一つとなります。
寺院墓地の場合、ここで「離檀(檀家をやめること)」の話し合いも同時に進めます。離檀に際して「離檀料」を求められることがありますが、墓地使用契約や墓地規則に定めがない限り、支払いを法的に義務づける根拠は乏しいとされています。とはいえ、これまでお世話になった感謝の気持ちとして相応の金額を包むのが実務上の慣例になっている面もあるため、感情的な対立に発展する前に、早めに率直な相談を持ちかけることが望ましいでしょう。金額の目安や払えない場合の考え方は「墓じまいの費用相場と払えない時の対処法」で解説しています。
ステップ4: 改葬先からの受入証明書の取得
改葬先の管理者に、遺骨を受け入れる旨を証明する「受入証明書(使用承諾書等の名称の場合もあります)」を発行してもらいます。改葬先との契約手続きにあわせて発行されることが一般的です。
なお、自治体によっては受入証明書が不要なケースや、逆に独自の様式を求められるケースもあるとされています。申請前に、お墓のある市区町村の窓口へ、どの書類が必要かを確認しておくと二度手間を防げます。
ステップ5: 改葬許可申請
埋葬証明書と受入証明書がそろったら、いよいよ行政手続きです。墓じまいで遺骨を別の場所に移すこと(改葬)は、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、市町村長の許可が必要と定められています。申請先は、現在お墓がある市区町村の役所です(新しい改葬先の自治体ではない点に注意してください)。
一般的な必要書類は次のとおりです。
- 改葬許可申請書(申請先の自治体所定の様式)
- 埋葬証明書(ステップ3で取得したもの)
- 受入証明書(ステップ4で取得したもの)
- 申請者の本人確認書類(申請者が祭祀承継者と異なる場合は委任状等が必要になることもあります)
手数料は自治体によって差があり、無料としているところもあれば、数百円から1,500円程度としているところもあります。府中市のように無料の自治体がある一方、遺骨1体(1件)ごとに数百円を定めている自治体もあるため、金額は事前に申請先の窓口へ確認することをおすすめします。審査から交付までの期間も自治体差があるため、余裕を持ったスケジュールで申請するとよいでしょう。
ステップ6: 閉眼供養と墓石撤去工事
改葬許可証が交付されたら、遺骨を取り出す前に、僧侶に「閉眼供養(魂抜き)」を依頼するのが一般的です。お墓に宿るとされる魂を抜き、単なる石材(墓石)に戻すための儀式で、感謝の気持ちを込めてお布施を包みます。閉眼供養が終わったら、石材店に依頼して墓石の解体・撤去工事を行い、遺骨を取り出します。工事にあわせて区画を更地に戻し、管理者へ返還するのが一般的な流れです。撤去工事の費用や作業内容の目安は「墓じまいの費用相場と払えない時の対処法」で解説しています。
ステップ7: 改葬先への改葬許可証の提出と納骨
最後に、取り出した遺骨と改葬許可証を改葬先へ持参し、納骨します。改葬先の管理者は、改葬許可証を確認したうえで遺骨を受け入れる流れが一般的です。永代供養墓や樹木葬など、施設によっては納骨にあわせて法要を行う場合もあるため、事前に改葬先へ当日の流れを確認しておくと安心です。
ここまでで、墓じまいの一連の手続きは完了となります。改葬許可証は、自治体によっては提出後に返却されず控えが必要な場合もあるため、コピーを取っておくと後々の確認に役立ちます。
つまずきやすいポイントと事前の備え
墓じまいの手続きそのものは、書類さえそろえば大きく複雑なものではありません。実際に進める中でつまずきやすいのは、書類の準備よりも「人との調整」であることが多いようです。
親族間では、お墓の解体そのものへの抵抗感、改葬先が遠方になることへの反対、費用負担の押し付け合いといった形でトラブルが表面化しやすいとされています。こうした対立は、話し合いが進んでからよりも、早い段階で相談を持ちかけたほうが解決しやすい傾向にあります。離檀交渉についても同様で、寺院との関係がこじれてから金額交渉に入るよりも、検討し始めた早い段階で率直に事情を話しておくほうが、双方にとって納得感のある着地点を見つけやすくなります。相場よりも著しく高額な離檀料を求められた場合は、一人で抱え込まず、弁護士や消費生活センターなどの専門窓口へ相談することも選択肢に入れておくとよいでしょう。
よくある質問
改葬許可はどこに申請すればよいですか
現在遺骨が埋葬されているお墓がある市区町村の役所が申請先になるのが一般的です。改葬先の自治体ではない点に注意してください。必要書類や手数料の詳細は自治体によって異なるため、事前に窓口へ確認することをおすすめします。
改葬許可申請は自分でできますか
多くの場合、申請者自身が手続きを進めることができるとされています。ただし、埋葬証明書は現在の墓地管理者、受入証明書は改葬先の管理者にそれぞれ発行してもらう必要があるため、関係者との調整が発生します。手続きに不安がある場合は、行政書士など専門家に依頼することも可能です。
改葬許可証を紛失したらどうなりますか
再発行の可否や手続きは自治体によって異なるとされています。紛失に気づいた場合は、速やかに申請先の市区町村窓口に相談することをおすすめします。今後の手続きに備えて、交付後はコピーを保管しておくと安心です。
本記事は2026年9月時点で公開されている情報をもとにした一般的な流れの解説であり、必要書類や手続きの詳細は自治体によって異なります。個別の状況に応じた判断が必要な場合は、お墓のある市区町村の窓口や、弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。