ご家族を亡くされ、葬儀費用が払えないと感じている方に向けて、使える公的制度を整理しました。頼れるのは、健康保険の葬祭費・埋葬料、生活に困窮した方の葬祭扶助、亡くなった方の預貯金の払戻し制度の三つです。誰が・どこへ・いつまでに申請するかの順に説明します。最初の一歩は、亡くなった方の健康保険の種類と、ご自身の家計の状況を確かめることです。

葬儀費用が払えないとき、まず何を確認すればよいですか

最初に確かめるのは、亡くなった方が加入していた健康保険です。

国民健康保険や後期高齢者医療なら葬祭費、協会けんぽなら埋葬料・埋葬費が対象です。葬儀を行う方の生活が苦しい場合は、葬祭扶助という道もあります。

制度対象になる場面申請する人主な窓口
葬祭費国民健康保険・後期高齢者医療の加入者が亡くなった葬祭を行った人市区町村の窓口
埋葬料・埋葬費協会けんぽの加入者などが亡くなった生計を維持されていた人、または埋葬を行った人協会けんぽの支部
葬祭扶助葬儀を行う人が生活に困窮している葬儀を行う人福祉事務所の生活保護担当

葬祭費と埋葬料は、葬儀を終えて領収書をそろえてから申請する形が基本です。葬儀社への支払い時点では、別の資金が必要になります。その資金源として、預貯金の払戻し制度や葬祭扶助が選択肢に入ります。

金額や窓口は全国一律ではありません。以降は公式ページで確認できた例を自治体名つきで紹介します。

葬祭費はいくら出て、いつまでに申請できますか

葬祭費は、国民健康保険または後期高齢者医療の加入者が亡くなったときに、葬祭を行った人へ支給されます。世田谷区や目黒区では、葬儀の領収書に名前のある方が申請者です。

自治体ごとの金額の例

自治体対象金額備考
世田谷区国民健康保険7万円国保・年金課、総合支所くみん窓口、出張所、郵送で申請
横浜市74歳以下の国民健康保険5万円亡くなった方が住んでいた区の保険年金課で申請
大阪市国民健康保険5万円亡くなった方が住んでいた区の保険年金業務担当で申請(郵送も可)
岡山市国民健康保険5万円火葬のみの葬祭も対象
目黒区後期高齢者医療7万円東京都後期高齢者医療広域連合の5万円と区の2万円の合計。窓口・郵送・オンラインで申請

上の金額は、2026年10月27日に各自治体の公式ページで確認した内容です。同じ国民健康保険でも、5万円の市と7万円の区があります。お住まいの自治体の窓口で確認してください。

必要書類は、葬儀社の領収書の写し、亡くなった方の保険番号が分かるもの、申請者名義の口座が目安です。

申請の期限は葬儀の翌日から2年

確認した五つの自治体は、いずれも葬祭を行った日の翌日から2年を期限としています。国民健康保険法第110条は、保険給付を受ける権利が行使できる時から2年で時効により消滅すると定めています。後期高齢者医療も、高齢者の医療の確保に関する法律第160条に同じ趣旨の規定があります。

会社員だった方の埋葬料・埋葬費は誰が受け取れますか

協会けんぽに加入していた方が亡くなると、埋葬料または埋葬費が支給されます。受け取る人によって、呼び名が変わります。

  • 埋葬料は5万円です。亡くなった方に生計を維持されていた方が対象で、一部でも支えられていれば該当します。法律上の親族や同居、世帯主であることは条件ではないと、協会けんぽのページにあります。
  • 埋葬費は、実際に埋葬を行った方が受け取ります。埋葬料を受け取れる方がいない場合の扱いで、実費が上限5万円まで支給されます。霊柩車代、火葬料、僧侶の謝礼などが対象です。
  • 家族埋葬料は、被扶養者が亡くなった場合に、加入者本人が受け取る5万円です。

加入者でなくなってから3か月以内に亡くなった場合も、支給の対象になります。申請書は「健康保険埋葬料(費)支給申請書」で、協会けんぽの支部に提出します。

期限の根拠は、健康保険法第193条です。保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効により消滅すると定められています。会社の健康保険組合に加入していた場合の金額と手続きは、各組合に確認してください。

葬祭扶助の条件は何で、いつ相談すればよいですか

葬祭扶助は、生活保護の扶助のひとつです。厚生労働省の案内では、定められた範囲内で実費が支給されるとされています。

葬祭扶助の対象になる人と範囲

生活保護法第18条は、困窮した人に対する葬祭扶助の範囲として、火葬または埋葬、納骨などを挙げています。

条件の中心は、葬儀を行う方の資産や収入です。千葉市の案内では、困窮した方が一定の親族の葬祭を行う場合に受けられることがあるとされています。資産・収入などの要件は生活保護と同様です。

基準額は地域と年度で変わる

東京都福祉局の2024年版の手引きでは、令和6年4月1日時点で大人21万5,000円以内、小人17万2,000円以内です。1級地の1の例で、級地や年度により変わります。

葬儀の日程や葬儀社を決める前に相談する

神戸市は、生活保護の適用は申請のあった日以降としています。葬儀社と契約する前に福祉事務所へ相談すると、扱いを確かめながら進められます。窓口は福祉事務所の生活保護担当で、福祉事務所のない町村では町村役場が受け付けます。取り扱いは自治体ごとに異なります。

亡くなった方の預貯金は葬儀費用に使えますか

亡くなった時点で、預貯金は遺産になるとされています。それでも、民法の改正で、遺産分割の前に一部を払い戻す制度ができました。法務省は、利用の目的として生活費や葬儀費用の支払いを挙げています。

払戻しの上限は、次の式で決まります。

  • 相続開始時の預貯金の額 × 3分の1 × 払戻しを受ける相続人の法定相続分

たとえば預貯金が600万円で法定相続分が2分の1なら、600万円 × 3分の1 × 2分の1で100万円です。払戻しは、同一の金融機関に対して150万円が上限とされています。

全国銀行協会によると、この方法の払戻しは、遺産の一部分割をしたものとして扱われます。必要書類は金融機関に確認してください。家庭裁判所に申し立てる別の方法もあります。

相続人どうしの負担の分け方は、葬儀費用を兄弟姉妹で分けるときの考え方で整理しています。相続の承認や放棄を検討している場合は、預貯金に手をつける前に、弁護士など専門家へご相談ください。

民間の金融機関には、葬儀の費用に使える借入もあります。公的制度で賄える部分を先に確認すると、借入額を抑えられます。金利と総返済額は、事前に比べて選んでください。

費用を抑える葬儀の形にはどのようなものがありますか

通夜と告別式を行わず、火葬だけで見送る形を、直葬や火葬式と呼びます。儀式にかかる費用を絞れる形です。岡山市の葬祭費のように、火葬のみの葬祭を支給の対象にしている自治体もあります。

直葬の流れと遺骨の扱いは、直葬の費用と流れ、散骨という選択で整理しています。

葬儀社を選ぶときは、見積書を必ず受け取り、明細を確認してください。国民生活センターは、打ち合わせを親族など複数人で行うことも勧めています。チラシ価格が約30万円の一日葬で、契約額が約80万円になった相談事例も紹介されています。総額の分かる見積書で比べてください。

葬儀のあとの墓じまいの工面は、墓じまいの費用が払えないときの対処法をご覧ください。

状況に合わせた次の一歩は、次のとおりです。

  • 健康保険の給付を受ける方は、保険の種類を確かめて葬祭費か埋葬料の窓口へ
  • 生活が苦しい方は、葬儀社と契約する前に福祉事務所へ
  • 預貯金がある方は、取引先の金融機関で払戻しの書類を確認
  • 費用の形を見直したい方は、直葬を扱う葬儀社の資料で総額を比較

よくある質問

葬祭費や埋葬料は、葬儀の支払いに間に合いますか

葬儀後に領収書をそろえて申請する形が基本です。支払い時点の資金は、預貯金の払戻し制度や葬祭扶助の相談で用意します。支給までの期間は窓口で確認してください。

申請が2年を過ぎてしまったらどうなりますか

岡山市のように、2年を過ぎると支給されないと案内する自治体があります。葬儀から日が経っている場合は、早めに窓口へ問い合わせてください。

生活保護を受けていなくても葬祭扶助は使えますか

千葉市の案内では、困窮した方が一定の親族の葬祭を行う場合に受けられることがあるとされています。要件は生活保護と同様で、判断は福祉事務所が行います。葬儀の前に窓口へ相談してください。


本記事に記載の費用相場は、2026年10月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、実際の金額は自治体・加入している健康保険・葬儀社によって異なります。個別の法律判断や税務判断が必要な場合は、自治体の窓口や弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。