「実家を相続したものの、誰も住む予定がなく、空き家のまま固定資産税だけを払い続けている」という方は少なくありません。売却するべきか判断がつかないまま時間が過ぎると、建物の傷みが進み、税金の負担だけが続いてしまいます。

結論として、実家じまいと空き家の売却は切り離せない関係にあり、相続してから3年以内に売却すると税制上の優遇を受けられる制度があります。この記事では、実家を相続してから売却までに検討することと、関係する税金の考え方を整理します。

空き家のまま放置すると何が起こるか

相続した実家を空き家のまま放置すると、固定資産税・都市計画税の負担が続くうえに、建物の老朽化が進みます。

固定資産税は所有している限りかかり続ける

不動産を所有している限り、毎年固定資産税・都市計画税の支払い義務があります。人が住まなくなっても税額が自動的に下がるわけではなく、更地にすると住宅用地の軽減措置が外れて税額が上がる場合もあるため、解体のタイミングは税額のシミュレーションをしたうえで判断するのが望ましいとされています。

老朽化が進むと売却しにくくなる

空き家の状態が悪化すると、買主が見つかりにくくなったり、解体費用がかさんだりする傾向があります。早めに売却するか活用するかの方針を決めておくと、費用面でも有利に働きやすくなります。

相続した実家を売却する2つの選択肢

実家を売却する場合、建物をそのまま残して売る「古家付き売却」と、解体して更地にする「更地売却」の2つの選択肢があります。

古家付きのまま売却する

解体費用をかけずに売却できるため、初期費用を抑えられます。ただし、建物の傷み具合によっては買主から解体費用分の値引きを求められることがあり、結果として更地売却と手取り額が近くなる場合もあります。

解体して更地で売却する

買主がすぐに建築計画を進められるため、古家付きより売れやすくなる傾向があります。一方で、解体費用は木造30〜50坪でおおよそ120万〜300万円が目安とされ、先に費用がかかる点は考慮が必要です。自治体によっては解体費用の一部を補助する制度があるため、解体前に自治体の窓口で確認しておくと負担を抑えられます。

相続空き家の3000万円特別控除を確認する

相続した実家を売却する際、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。

適用の主な要件

国税庁の案内によると、被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた家屋であること、昭和56年5月31日以前に建築されたものであること、相続から売却まで事業用・貸付用・居住用に使われていないことなどが要件とされています。売却代金が1億円以下であることや、親族など特別な関係がある人への売却でないことも条件に含まれます。

適用期限は相続から3年以内

この特例は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが要件の一つです。また制度自体の適用期限は令和9年12月31日までとされています。控除額は原則3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円になる点に注意が必要です。要件の詳細な当てはめは個別の状況によって判断が分かれるため、税理士に確認することをおすすめします。

売却を先延ばしにするとどうなるか

「まだ決めなくても大丈夫」と先送りにすると、税制上の優遇を受けられなくなるだけでなく、日々の管理負担も積み重なっていきます。

特別控除の期限を過ぎると税負担が増える

相続空き家の3,000万円特別控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。この期限を過ぎてから売却すると、譲渡所得から控除を受けられず、所有期間に応じて約20〜39%の税率で課税される可能性があります。売却する意思がある場合は、期限を意識してスケジュールを立てることが総額に直結します。

管理の手間と近隣トラブルのリスク

空き家を放置すると、庭木の手入れや郵便物の管理など、定期的な見回りが必要になります。遠方に住んでいる場合、この管理自体が負担になりやすく、また建物の劣化が進むと、外壁の落下や害虫の発生など近隣とのトラブルにつながることもあります。売却や解体の方針を決めるまでの間も、最低限の管理を委託できるサービスがあるかを確認しておくと安心です。

相続人が複数いる場合の注意点

実家を相続人全員で分ける場合、売却してから代金を分ける「換価分割」という方法がよく使われます。

遺産分割協議書に換価分割である旨を明記する

換価分割を行う場合、遺産分割協議書に「売却代金を分割する」旨を明記しておくことが税務上重要とされています。明記がないまま代表者名義で売却して分配すると、贈与とみなされて贈与税が課される可能性があるため、協議書の作成段階で税理士や司法書士に相談しておくと安心です。

家財整理や仏壇の扱いも合わせて決めておく

実家の売却を進める前提として、家財の整理や仏壇の処分方法も決めておく必要があります。要素ごとの費用は実家じまいの費用を要素別に整理で、仏壇の処分費用は仏壇の処分費用相場で詳しく解説しています。

売却を含む全体の順序は実家じまいの手順で時系列に整理しています。

よくある質問

空き家のまま何年も放置しても問題ありませんか

固定資産税・都市計画税がかかり続けるほか、建物の老朽化が進んで売却しにくくなる可能性があります。相続空き家の3,000万円特別控除は相続から3年以内の売却が要件のため、方針を早めに決めておくと選択肢が広がります。

3000万円特別控除は誰でも使えますか

被相続人が一人で住んでいた家屋であることや建築年、用途、売却代金の上限など複数の要件があります。要件に該当するかどうかは個別の状況によって判断が分かれるため、税理士や国税庁の相談窓口に確認することをおすすめします。

古家付き売却と更地売却はどちらが得ですか

建物の傷み具合や立地によって変わります。古家付きは解体費用がかからない一方、買主から値引きを求められることがあり、更地は売れやすい傾向がある一方で先に解体費用がかかります。複数の不動産会社に両方のパターンで査定を依頼すると判断材料になります。


本記事に記載の税制・費用に関する情報は、2026年9月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、個別の要件該当性や具体的な税額は状況によって異なります。税務判断は税理士、法律判断は弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。