空き家を相続したあとの手続きと税金は、期限のあるものから順に片づけると全体像がつかめます。最初の山は3つです。相続放棄を考えるなら知ってから3か月、相続登記は知った日から3年、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に届きます。この記事では、相続が決まった直後から1年ほどの動きを時系列の表にまとめ、保有・売却・賃貸・解体の選び方まで整理します。まず表から見て、いまの時期の行を確認してください。
空き家を相続したら、1年のうちに何をすればいいですか
次の表が、相続の直後から1年ほどの流れです。期限のあるものから順に動くと迷いません。
| 時期の目安 | やること | 窓口 | 期限・決まり |
|---|---|---|---|
| 直後〜1か月 | 相続人・遺言書・登記名義の確認、空き家の現地確認 | 家族間、現地 | 期限の定めなし |
| 相続を知ってから3か月以内 | 相続放棄を考える場合の申述、または期間の伸長申立 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 | 知ったときから3か月 |
| 現所有者になったと知ってから3か月 | 固定資産税の現所有者の申告(市区町村により様式は異なる) | 市区町村の資産税担当課 | 佐倉市の案内では、知った日の翌日から3か月経過する日まで |
| 3年以内 | 相続登記、または相続人申告登記 | 法務局 | 取得を知った日から3年以内 |
| 1年ほどの間 | 保有・売却・賃貸・解体の方針決め | 不動産会社、市区町村 | 期限の定めなし(売却時の特例には期限あり) |
(法務省・裁判所・佐倉市の各ページ、2026年10月30日確認)
最初の1か月で手元にそろえる4点
固定資産税の納税通知書、登記名義、遺言書の有無、相続人の範囲の4点を手元に集めてください。鍵の所在、雨漏り、庭木の状態も、この時期に見ておきます。親が亡くなった直後の動きは親が亡くなったら実家はどうする?に、実家全体の順序は実家じまいの手順にあります。
相続放棄と相続登記には、どんな期限がありますか
期限がはっきり決まっているのは、相続放棄の3か月と、相続登記の3年です。
相続放棄は、知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ
裁判所の案内では、相続放棄の申述は、相続が開始したことを知った時から3か月以内にします。申述先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。実家の所在地とは限りません。
費用は、収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。3か月のうちに財産を調べきれない場合は、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
放棄すると、被相続人の権利や義務を一切受け継がなくなり、預貯金などのプラスの財産も対象外になります。判断に迷うときは、売却や名義変更などに手を付ける前に、家庭裁判所の窓口か司法書士・弁護士へ相談してください。放棄後の管理の考え方は実家の空き家を相続放棄したらで整理しています。
相続登記は、取得を知った日から3年以内
法務省の案内によると、相続登記の申請義務は令和6年4月1日に始まりました。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に、登記をする必要があります。遺産分割で取得した場合は、遺産分割の日から3年以内です。
登記をしないままにすると、10万円以下の過料が科される可能性があります。施行前に相続して未登記の不動産は、令和9年3月31日までに登記します。
遺産分割が長引くときは相続人申告登記
遺産分割がまとまらず3年以内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」があります。3年以内に、登記官へ相続の開始と自分が相続人であることを申し出る方法です。
義務を果たしたとみなされるのは、申し出た相続人本人だけです。売却や抵当権の設定には、あらためて相続登記が必要です。
空き家の相続でかかる税金は、誰がいつ払いますか
関わる税金は、固定資産税、相続税、売却したときの譲渡所得税の3つです。
固定資産税は、1月1日時点の所有者に課税される
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日現在の所有者に課税されます。所有者が亡くなり相続登記が済んでいない場合は、1月1日現在で「現に所有している者」、つまり相続人に課税します(佐倉市の案内。根拠は地方税法343条2項)。
相続人が複数いる場合は、相続権を持つ人全員で協議して代表者を決め、「相続人代表者指定届(現所有者申告書)」を出します。佐倉市の案内では、現所有者であることを知った日の翌日から3か月経過する日までが提出期限です。様式と期限は市区町村ごとに異なるため、空き家の所在地の資産税担当課で確かめてください。
この申告で変わるのは納税義務者で、登記簿上の所有権は動きません。相続放棄をした人は記入せず、受理通知書の写しを添える扱いです(佐倉市の例)。
相続税と売却時の税金は、個別に確認する
相続税は、空き家だけでなく預貯金なども含めた財産全体で、申告が必要かどうかが決まります。要否と期限は、税務署か税理士で確認してください。
売却したときの譲渡所得税には、相続した空き家向けの特別控除の特例があります。要件と期限は実家じまいと空き家売却の関係に整理しています。
空き家を放置すると、管理の面で何が問題になりますか
管理が行き届かない空き家は、市区町村から指導を受け、固定資産税の軽減も失う場合があります。
管理不全空家と特定空家等の違い
国土交通省の特設サイトによると、空家法は令和5年に改正されました。倒壊の危険性が高いなど周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家は、市区町村が「特定空家」に指定し、指導や勧告を行います。
改正で加わった「管理不全空家」は、適切に管理されていない、特定空家の手前の空き家です。こちらも指導の対象になります。
勧告を受けると住宅用地の特例が外れる
指導に従わず勧告を受けると、住宅用地の特例(税負担の軽減措置)が受けられなくなります。特例では、課税標準が200平方メートル以下の部分で6分の1、超える部分で3分の1に軽減されます。
勧告の前に管理を整えておくことは、税額の面でも意味があります。住宅を取り壊した場合も、土地が住宅の敷地ではなくなるため、住宅用地の特例が外れることがあります。解体を決める前に、資産税担当課で税額を試算してください。
保有・売却・賃貸・解体は、どう選べばいいですか
方針は、「誰かが使う予定があるか」「相続人の間で合意できるか」の2点から絞れます。
| 選択肢 | 向く場面 | 続くこと・注意点 | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 保有 | 家族が住む・使う予定がある | 固定資産税と管理が続く。管理不全空家の対象にならないよう見回りが必要 | 市区町村 |
| 売却 | 使う予定がなく、手放したい | 売却には相続登記が必要。相続人が複数なら全員の合意が前提 | 不動産会社、司法書士、税理士 |
| 賃貸 | 立地がよく、貸し出せる状態 | 修繕・入居者対応が発生。売却時の特別控除は、貸付用に使うと対象外 | 不動産会社、税理士 |
| 解体 | 建物の傷みが進み、売りにくい | 解体費用がかかり、住宅用地の特例が外れる場合がある。自治体の補助制度は市区町村で確認 | 解体業者、市区町村 |
売却は、維持費と管理の手間が止まる選択肢
使う予定のない空き家は、売却すると固定資産税と見回りの負担が止まります。相続人申告登記だけでは売却できないため、相続登記を済ませてから査定に進んでください。
建物を残す古家付きか、解体して更地かで、手取りは変わります。複数社に査定を依頼すると、両方の価格を比べられます。
賃貸と解体は、費用と税の条件を先に確かめる
賃貸は、貸し出せる状態かどうかを地元の不動産会社に見てもらうのが早道です。解体は、費用の目安を実家の解体費用の相場で確かめてください。補助制度の有無と固定資産税の変化は、市区町村の窓口で聞けます。
迷ったときの決め方
住む予定があるなら保有、維持費を止めたいなら登記から売却です。貸せる立地なら賃貸の相談、傷みが進んで売りにくければ解体の見積もりに進みます。相続人の意見が割れているうちは、相続人申告登記で期限を守りながら話し合ってください。
よくある質問
空き家を相続しても、登記しないままで問題ありませんか
相続登記は、取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。遺産分割が長引く場合は、3年以内に相続人申告登記をする方法があります。ただし売却には相続登記が必要です。
相続放棄をすれば、固定資産税の請求は止まりますか
放棄した人は、被相続人の権利や義務を受け継ぎません。通知の扱いは市区町村と相続人の状況で異なります。放棄を決めたら、受理通知書の写しを持って、空き家の所在地の資産税担当課へ問い合わせてください。
3か月以内に売却まで終える必要がありますか
3か月は相続放棄の申述期限で、売却の期限ではありません。ただし売却時の特別控除の特例には期限があります。期限と要件は実家じまいと空き家売却の関係で確かめてください。
本記事に記載の期限・制度の内容は、2026年10月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、実際の取り扱いは自治体によって異なります。個別の法律判断や税務判断が必要な場合は、法務局・税務署・市区町村の窓口や、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。