墓じまいを進めるなら、墓石を撤去するだけでは終わりません。取り出した遺骨を、次にどこへ納めるのかを決める必要があります。選択肢が多く、何から比べればよいか分からない、という方は少なくありません。

この記事では、墓じまい後の遺骨の行き先を、費用の目安、手続き、向いている考え方の三つの視点で比べます。それぞれの詳しい費用や手順は、各テーマの記事へ進めるようにまとめました。

墓じまい後の遺骨の行き先は大きく5つ

選択肢は、次の五つに整理できます。

  1. 永代供養墓: 寺院や霊園が供養と管理を続ける。合祀型と個別安置型がある
  2. 樹木葬: 墓石の代わりに樹木などを目印にして納める
  3. 納骨堂: 屋内の施設に遺骨を納める
  4. 散骨: 海などにまいて自然に還す
  5. 手元供養: 自宅に置いたり、身につけたりして供養する

大きな分かれ道は、遺骨を「どこかの施設に納める」か、「納めずに自分で扱う」かです。前者は費用と手続きが比較的はっきりしています。後者は費用を抑えやすい一方で、手続きや将来の扱いを自分たちで考える必要があります。

改葬先ごとの費用の目安

お仏壇のはせがわの解説(2022年2月3日公開)には、改葬先ごとの新しい納骨先の用意費用が次のように掲載されています。事業者による目安で、公的機関の調査値ではありません。

行き先費用の目安(はせがわ掲載)詳しい記事
永代供養墓5万〜150万円程度墓じまい後の永代供養の費用
納骨堂10万〜150万円程度納骨堂の費用
樹木葬20万〜80万円程度樹木葬の費用をタイプ別に解説
散骨5万〜70万円程度海洋散骨の費用を3方式で比較
手元供養数百円〜50万円程度手元供養のやり方と費用

同じ解説では、一般の墓所を新しく用意する場合を80万〜250万円程度としています。また、改葬先での納骨法要のお布施が3万〜10万円程度かかる場合もあるとされています。幅が広いのは、合祀か個別か、地域や運営主体によって料金が変わるためです。ここに、墓石の撤去費用などが別に加わります。

行き先によって手続きが変わる

遺骨を別の場所へ移すとき、手続きの扱いが行き先で分かれます。

墓地、埋葬等に関する法律の第5条は、改葬を行おうとする者は市町村長の許可を受けなければならないと定めています。総務省の東北管区行政評価局の資料によると、厚生労働省は、遺骨を他の墳墓や納骨堂に移す場合は市町村長の改葬許可が必要としています。一方、自宅に安置する場合や散骨する場合は、この改葬許可は必要ないとされています。

ただし、実際の取り扱いは自治体や墓地の管理者によって異なる場合があります。散骨や自宅での保管を考えているときも、まず現在のお墓がある市区町村の窓口に確認してください。

施設に納める場合の書類

永代供養墓、樹木葬、納骨堂のように施設へ納める場合は、新しい納骨先から受入証明書などの書類を受け取り、現在のお墓がある市区町村に改葬許可を申請します。府中市の案内では、現在の墓地管理者が出す埋蔵・収蔵の事実証明書や、改葬先の使用承諾書の写しなどが必要書類として挙がっています。申請者が墓地の使用者でない場合は、使用者の承諾書も求められます。全体の流れは墓じまいの手順の記事にまとめています。

散骨・手元供養を選ぶ場合

散骨は、直接禁じる法律はないとされていますが、条例で規制している自治体があります。散骨と墓じまいを組み合わせるときの流れは墓じまいして散骨する手続きと費用の記事で確認できます。手元供養は、自宅に遺骨を置く期限や保管方法を遺骨の自宅保管の記事で整理しています。

迷ったときの選び方の考え方

費用だけで決めると、あとから気持ちの面で後悔することがあります。次の問いに答えていくと、候補がしぼれます。

  • お参りする場所は残したいか: 残したいなら、永代供養墓・樹木葬・納骨堂。残さなくてもよいなら、散骨も選択肢に入る
  • 遺骨を後から取り出す可能性はあるか: 合祀や散骨は、取り出せない。迷う場合は、一定期間は個別に安置されるタイプや、一部を手元に残す方法がある
  • 承継する人はいるか: いない場合は、永代供養のように管理を任せられる形が向く
  • 家族や親族の意向は一致しているか: 反対が出やすいのは散骨や合祀。事前の話し合いが大切

一つに決めきれなければ、組み合わせる方法もあります。大半を永代供養や散骨にして、一部だけを手元供養にする形です。この場合、分骨の手続きが必要になることがあります。

合祀と分骨で、あとから変えられなくなること

行き先のうち、合祀を選ぶときは「取り出せなくなる」点を先に押さえてください。ALSOKの解説は、合祀は他の人の遺骨と一緒にする納め方で、合祀後は遺骨を取り出せないと説明しています。最初は個別に安置し、一定期間のあとで合祀するタイプなら、その期間中は取り出して改葬できるとされています。費用の例として、広島市の令和8年度の公営合葬墓は、遺骨1体あたり5万円(管理料を含む)が案内されています。言葉の違いや公営・民間の費用は合祀墓とは?合葬墓・永代供養墓との違いで比べられます。

一部を手元や別の場所に残したいときは、合祀の前に分骨を済ませる必要があります。広島市のFAQによると、納骨済みの遺骨を分ける場合は墓地や納骨堂の管理者が証明書を出し、本骨を移さなければ改葬の手続きは不要とされています。窓口や書類は分骨の手続きと分骨証明書の取り方に整理しました。永代供養を選ぶ場合に納骨法要で包むお布施の目安は永代供養のお布施の相場で確認できます。

決める前の最終チェック

行き先を決める前に、次の点を確認しておくと安心です。

  1. 総額を、撤去側の費用と移転先側の費用に分けて見積もっているか
  2. 合祀の時期と、合祀後は遺骨を取り出せないことを理解しているか
  3. 運営主体は、自治体・宗教法人・公益法人などで、許可を受けた施設か
  4. 親族に事前に伝え、同意を得ているか

よくある質問

墓じまいの後、遺骨を自分で持ち続けても問題ありませんか?

自宅に安置する場合、改葬許可は必要ないとされています。ただし、将来、遺骨の扱いを家族に引き継ぐことになります。納め先の希望を書き残しておくと、残された家族が迷いにくくなります。

いちばん費用を抑えられる行き先はどれですか?

掲載されている目安では、合祀型の永代供養や散骨は低めの金額から用意されています。ただし、プランの内容や人数で変わり、撤去費用や手続きの費用は別に必要です。見積もりは複数の事業者で取り、含まれる項目をそろえて比べてください。

先に行き先を決めないと、墓じまいは進められませんか?

施設に納める場合は、改葬許可の申請に新しい納骨先の書類が必要になるため、行き先を先に決めるのが一般的です。まず行き先を決め、そのあとで撤去や閉眼供養の日程を組む順番が進めやすい流れです。


本記事に記載の費用は、2026年10月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、実際の金額は事業者・寺院・自治体によって異なります。個別の法律判断や税務判断が必要な場合は、自治体の窓口や弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。